研究概要 |
少ない数のマーカーでも逆運動学解析可能なマウス全身の粗粒度骨格モデルを開発し、国際会議(ICABB 2010)で発表した。実験用マウスの筋骨格モデルを開発するためには、ヒトと比べ圧倒的に少ない機能解剖学的な知識を何らかの方法で補完しなくてはならない。しかし、ゼロからこの作業を行うことは本計画において現実的ではない。そこでヒトの筋骨格モデルをリファレンスとして、マウスとヒトの進化的な関係を利用し、機能解剖学的な情報をマウスの骨格モデルに写像するためのソフトウェアを開発した。まずヒト骨格モデルをマウスの骨格に写像するための関数f(x)を推定し、このf(x)を用いてヒト筋腱構造をマウスの骨格に写像した。この写像の結果を検証するために、腱などの結合組織特異的にGFPを発現するトランスジェニックマウスを入手し、10,000枚程度のスライス画像を取得した。同時に骨格構造データを取得するためにX線CTスキャンも行った。これらの画像データから3次元データを再構成し、腱と骨格構造の間の幾何学的関係を取得するための基本データを構築した。この結果は国際学会(WBC 2010)で発表した。マウスの種内変異はヒトと比べ決して小さくはないため、ヒトとは異なり、マウスでは形態的な違いをカバーするために、ひとつの標準的な筋骨格モデルでは不十分であることが予想される。われわれのワークフローにおいて、一番のネックとなっているのはボリュームデータから「動く」骨格モデル作るための骨格データの分割(セグメンテーション)である。従来、この作業は人手で行っていたが、今後の応用を考えると自動化できることが望ましい。しかし、骨格のセグメンテーションでは、ほぼ等質な対象同士をきわめて薄い境界(軟骨)で分割するという、特徴的な困難を克服しなくてはならない。この問題を解決するためまったく新しいアルゴリズムを開発し、その成果を国際会議(ICAVC 2010)で発表した。
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