研究概要 |
本研究は,近年の社会精神障害者の増加に対処し,診断・治療や社会復帰訓練とその評価や簡便な検診を可能とする医療・保健支援技術の進展に向け,それら障害の根幹となる自己空間認識を取り上げ,自己モニタ認知系の制御により想起される仮想自我変容感と脳機能および認知・言語機能変調の解析および障害者の精神症状との比較を通じて,社会生活能力のうち自己中心環境識に対する客観的,定量的指標を用いた簡易型社会機能検査法の確立を目指した。 本年度は,研究目的を遂行するため,以下の5項目の研究を行った。 1. 空間認知関連活動の簡易計測・解析法の開発に向けて,認知課題時の光トポグラフィ・EEGに加えてfMRIデータを取得し,認知成績と脳機能部位との相関解析を行った。 2. 聴覚・非聴覚自己モニタ認知系の制御法開発に向けて,外部視覚呈示による視野空間の変調が認知機能に及ぼす影響を乱数生成課題を用いて定量化し,聴覚による変調効果と比較した。 3. 発話データによる自己認識性に関連した脳機能モジュール特定法の開発を,音声による乱数生成課題とキー押し乱数生成課題によるデータの軸モデルに基づく相互解析により遂行した。 4. 自己空間認識性社会能力とその障害・認知リハビリテーション効果の評価法確立のため,視野空間制御下における線分2分法のプログラムを追加し,乱数生成課題との相関性・相補性を確認した。 5. ワーキングメモリ理論を基に,身体・運動能力,言語学習・運用能力とリーディングスパンの成績,社会コミュニケーション能力(システム化・共感・自閉性:SQ-EQ-AQ)の調査結果,音声とキー押し乱数生成および線分2等分の認知検査データ,光トポ・脳波・fMRIの脳機能情報をデータベース化し,性差や年齢差を含めた個人性・障害性抽出を試み,運動,言語,認知の個別学習・リハビリへの応用可能性を検討した。
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