研究概要 |
事象関連脳律動を再構成しようとする場合,事象関連脳律動は背景脳活動より通常1桁小さいため背景脳活動の影響を何らかの方法で除去する必要がある.この除去の方法として平成20年度においては(A)プリホワイトニング・アダプティブ空間フィルターを基にしたアプローチおよび(B)変分ベイズ推定法を基にしたアプローチの優劣を評価した.両方法とも背景脳活動のみを含むコントロールデータの存在を仮定し,コントロール時間窓は背景脳活動のみを含み,ターゲット時間窓は背景脳活動と関心対象信号を含むとの前提が必要である.(A)のプリホワイトニング空間フィルターではコントロール時間窓から求めたデータ共分散行列により,ターゲット時間窓から求めた共分散行列を白色化することにより(背景脳活動の影響が単位行列で表されるような変換を行うことにより)背景脳活動の影響を除去して関心対象の脳活動を選択的に再構成する方法である.また,(B)の方法は脳活動が比較的少数の因子とノイズの和に分解できると仮定し,コントロールデータから背景脳活動を表す因子と混合行列を求め,これを用いてターゲットデータから関心対象脳活動を表す因子と混合行列を求めることにより背景脳活動を除去し信号成分のみを抽出する,先に述べたように,これらの方法はコントロール時間窓は背景脳活動のみを含み,ターゲット時間窓は背景脳活動と関心対象信号を含むとの前提が必要である.かし,実際には事象関連脳律動はコントロールとターゲット時間窓の間では強度が変化するのみで両方に存在する.このような方式が仮定する前提条件と実際のデータ計測時の条件のズレに対して(A)および(B)のアプローチがどの程度頑強であるかをコンピューターシミュレーションを行い目安を得た.さらにこれら2つの方法はコントロールおよびターゲット時間窓に含まれる時間点が少ないと再構成結果に誤差を含むことが知られており,データー点が十分に得られない場合の頑強さについてもコンピューターシミュレーションによって明らかにしつつある.また,信号源のタイムコース推定結果から信号源間のコヒーレンスを推定する際にノーマリゼーションや信号源間のジッターが問題となる事が明らかになりつつあり,これら問題点の解決法については次年度に中心的課題として研究を行う.
|