研究概要 |
事象関連脳律動を再構成しようとする場合,事象関連脳律動は背景脳活動より通常1桁小さいため背景脳活動の影響を何らかの方法で除去する必要がある.この除去の方法として平成21年度においても前年度に引き続き(A)プリホワイトニング・アダプティブ空間フィルターを基にしだアプローチおよび(B)変分ベイズ推定法を基にしたアプローチの優劣を評価した.21年度は手指の運動を行いながら計測した実際の脳時間信号データを用いて評価を行った.(A)のプリホワイトニング空間フィルターではコントロール時間窓から求めたデータ共分散行列により,ターゲット時間窓から求めた共分散行列を白色化することにより背景脳活動の影響を除去して関心対象の脳活動を選択的に再構成する方法である.また,(B)の方法は脳活動が比較的少数の因子とノイズの和に分解できると仮定し,コントロールデータから背景脳活動を表す因子と混合行列を求め,これを用いてターゲットデータから関心対象脳活動を表す因子と混合行列を求めることにより背景脳活動を除去し信号成分のみを抽出する.先に述べたように、これらの方法はコントロール時間窓は背景脳活動のみを含み,ターゲット時間窓は背景脳活動と関心対象信号を含むとの前提が必要である.しかし,実際には事象関連脳律動はコントロールとターゲット時間窓の間では強度が変化するのみで両方に存在する.このような方式が仮定する前提条件と実際のデータ計測時の条件のズレに対して(A)および(B)のアプローチが頑強であり実用上問題がないとの結論を得た.さらに平成21年度では,再構成された信号源波形からコヒーレンスを計算し,脳活動の連関を調べる方法についても研究を行い,コヒーレンスの虚部を用いる事の有効生を検証した.また,ジッターを多く含む場合にはエンベロープコヒーレンスを計算する事が有効である事も見出した.さらに,あるボクセルとその他の全てのボクセルとのコヒーレンス虚部の平均を計算する事によりそのボクセル位置での脳神経活動の活性度を評価できることを見出した.次年度においてはこれらの方法を種々の実データで更に評価すると共に,情報の流れや因果的関連を計測できる方法について検討を進めていく.また,コヒーレンス虚部の均を計算する方法については,精神疾患の診断への応用に向けた基礎検討を開始する.
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