研究概要 |
骨の力学試験で現れる剛性の変化は、骨の微細な損傷により生じると考えられ、リモデリング活動の指標に用いられている。しかし、線形微小き裂のみからこの変化を説明することはできないようである。そのため、骨の微小損傷の挙動がひずみ分布との関係で定量化されれば、骨のリモデリング機構が明らかとなり、各種骨疾患の治療や骨とインプラント間の緩み対策などにも貢献すると考えられる。 本研究では,骨の微視損傷とひずみ分布との関係を明らかにするため,デジタル画像相関法を用いて骨組織表面のひずみ分布の解析を試みた.骨試料はウシ大腿皮質骨を用いて,ASTM E399に準拠した三点曲げ破壊じん性試験片を機械加工により作製した.破壊じん性試験にはインストロン型材料試験機を用い,負荷速度を1mm/minとした.試験片表面には黒色と白色のスプレー塗料を用いてランダムパターンを塗布し,試験片が破断するまで負荷を加えた.同時に収録したデジタル画像を用いて,画像相関法により骨表面のひずみ解析を行った.なお,骨の機械的特性に与える保存処理の影響を評価するため,試験片は製作後直ちに試験に供したコントロール群と,異なる保存液中で保存した後に試験を行う保存群に分けてそれぞれ試験を行った.画像相関法によるひずみ解析により,試験片のスリット先端近傍におけるひずみ量の増大を可視化できた.破断時のスリット先端(試験片長手方向)のひずみ値は,保存群に対しコントロール群では約8倍となり,保存処理による骨の有機成分の脆化が示唆された.
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