骨格系でも主に体重を支持する骨組織は、日常的に力学的環境にさらされ、骨内には常に内部ひずみが発生している。骨組織に加わる比較的ゆっくりとした静的負荷は骨表面でのリモデリングを活発化させ、また、繰り返しの負荷は内側皮質のリモデリングを活性化するとされている。これらの違いは、骨の微小損傷の生成-集積-連結過程が骨内に生じる局部的ひずみ場形成に関与していると推測されるため、骨のリモデリング活動を把握するためには、骨のひずみ分布の正確な把握が不可欠であると申請者は考えている。本研究では、皮質骨の微視損傷とひずみ分布との関係を明らかにするため、力学試験中の保存処理された皮質骨試験片表面のひずみ分布の解析を試みた。具体的には、ウシ大腿骨骨幹部皮質骨の三点曲げ破壊じん性試験中に発生する微小損傷の進展の様相を高速度カメラにより撮影し、開発したデジタル画像相関法にもとづく解析システムを用いて、ひずみ分布の測定を行った。その結果、本解析手法により、骨のスリット先端近傍におけるひずみ分布とひずみ集中部位の明確な可視化に成功した。特に、皮質骨のひずみは破壊じん性に比較して、化学固定の影響を顕著に受けやすいことを見出し、骨組織のひずみ測定上注意を要することを指摘した。なお、得られた成果については、Mater.Trans.Vol.52 No.5に掲載が決定している。現在、本測定により得られたひずみデータより、主ひずみとその方向、最大せん断ひずみなどを評価し、皮質骨の微小損傷拡大における指向性や応力拡大係数について検討中である。
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