研究概要 |
研究目的:歯周病菌(Porphyromonas gingivalis,P.g)は粥状硬化の進展に関与する可能性がある。我々は異なる流れ(層流vs乱流)下内皮細胞(内皮)における増殖・酸化・炎症因子の発現が、歯周病菌により変化するかを検討することを目的とした。本年は(1)抗P.g外膜蛋白(r40k)特異抗体を用いてヒト大動脈粥状硬化巣に歯周病菌が存在するかを調べた。(2)歯周病菌リポ蛋白(Pg-LPS)による培養ヒト内皮(HUVEC)の炎症因子発現を検討した。結果:1.ヒト粥状硬化巣;1)r40kはヒト粥状硬化のマクロファージ内に存在し、Atheromaの12/15症例(80%)15/21検体(71%)にr40k含有マクロファージを見た。2)r40kは40歳以上で出現、30歳以下は陰性。年齢が上がるに従い発現頻度・強度が増加した。3)r40kはFatty streakに殆ど存在せずDITは認めなかった。4)冠動脈粥状硬化は陰性だった。5)Western blottingではr40kは認めなかったが一人に37-kDaと44-k蛋白を認め、全員に50-kDaバンドを認めた。6)DNA解析では全員にP.gDNAを認めなかった。2.HUVEC:1)マクロファージ(THP1細胞)をPg-LPSで刺激後、3回洗浄してPg-LPSを除去し、通常の培養液で6時間培養した。この培養液でHUVECを培養したところ、対照に比べHUVECのTLR2mRNA発現が増強した。2)Pg-LPS刺激によりTHP1細胞は培養液中にIL8,IFN-γ,MCP-1,MIP-1を分泌した。結論:P.gはヒト粥状硬化に存在し、P.g刺激マクロファージから分泌されるサイトカインは内皮機能を変化させて好粥状硬化性に働く可能性がある。
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