超音波ドップラー血流計を用いて、160ワット(W)までの運動負荷、または姿勢変換における中大脳動脈血流波形を経時的に測定し、力学的な解析を行った。 1.運動負荷中の中大脳動脈血流波形の変化 ・120Wまでの中程度の運動負荷によって中大脳動脈の収縮期血流速度(最高血流速度)および平均血流速度は上昇するが、拡張期血流速度(最低血流速度)はあまり変化しない。120W以上の強い運動負荷では、収縮期血流速も拡張期血流速も大きな変化を示さなかった。 ・脳血流の力学的指標として流速変動度および抵抗指数を算出した。その結果、両者とも運動負荷とともに増大することが明らかになった。これらの結果は血管壁にかかる力学的負荷が増大したことを意味する。 2.姿勢変換時の中大脳動脈血流波形の変化 ・仰臥位-立位の姿勢変換における血流波形の変化は、姿勢変換後30秒間に顕著に表れる。拡張期血流速度が大きく変化するが、収縮期血流速度はあまり変化しないことが分かった。運動負荷とは異なる結果を示した。 ・流速変動度と抵抗指数も大きく上昇する。したがって、姿勢変換においても、血管壁にかかる力学的負荷が大きいと考えられる。 3.運動負荷直後の休憩時間中に流速変動度および抵抗指数を算出した。その結果、運動負荷中よりもこれらの値が大きくなることが明らかになった。これらの結果は血管壁にかかる力学的負荷が増大したことを意味する。 身体的ストレス(本研究では運動負荷と姿勢変換)によって生じる脳血流変化を経時的に測定することは、脳循環の理解という生理学的な重要性に加えて、脳血管病変、人間工学、健康科学などに関連して重要な情報を与えると考えられる。
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