研究概要 |
ラミニン-111はα1、β1、γ1鎖からなるヘテロ三量体タンパク質であり、初代培養肝細胞の培養基質として用いられてきた。これまでに、肝細胞培養基質としてラミニンα1鎖由来の合成ペプチドの有用性について検討し、α1鎖の配列由来合成ペプチドA13(RQVFQVAYIIIKA)に最も強い肝細胞接着活性を見出した。さらに、A13上で培養した肝細胞でAlbumin(ALB), Tyrosine aminotransferase(TAT), Tryptophan-2, 3-dioxygenase(TO), Cytochrome P450(CYP4A3)などの肝分化マーカー遺伝子の発現が維持できることを報告した。本年度の研究では、残りのサブユニットであるβ1鎖及びγ1鎖配列由来の細胞接着活性ペプチド24種類について、肝細胞培養基質としての検討を行った。その結果、β1鎖由来のB160(VILQQSAADIAR)とγ1鎖由来のC16(KAFDITYVRLKF)にA13と同等の強い肝細胞接着活性が見られた。また、ALB、 TAT、 TO、 CYP4A3の遺伝子発現レベルをReal time PCR法にて定量化した結果、B160およびC16上で培養した肝細胞でも肝分化マーカーの遺伝子発現が維持されていた。次に、ペプチドへの細胞接着に関与している受容体を調べるために、EDTAとヘパリンを用いた肝細胞接着阻害実験を行った。その結果、B160およびC16への肝細胞の接着はEDTAとヘパリンの両方で阻害を受けた。この結果は、これらのペプチドへの肝細胞接着は二価カチオン依存性かつ膜貫通型プロテオグリカンが関与することを示唆した。同定された肝細胞接着活性ペプチド及びそのアミノ酸配列は、肝細胞培養基質への利用だけでなく培養基質のデザインへ応用することが期待される。
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