研究概要 |
完全人工型LSの作用機序解明の一環として、人工LSの圧縮・拡張過程における両親媒性人工ペプチドの二次構造及び配向変化を偏光変調高感度反射赤外分光法(PM-IRRAS)により、in situ測定(気/液界面)にて精査した。方法としては合成ベプチド(Hel 13-5 : H-KLLKLLLKLWLKLLKLLL-OH)と生体リン脂質(DPPC,DPPG)から種々の多成分単分子膜を気/水界面上に展開した。これら単分子膜を連続的に圧縮・拡脹し、表面圧及び表面電位測定、さらに赤外スペクトル測淀[偏光全反射赤外法(Polarized ATR-FTIR)及び偏光変調高感度反射赤外分光法(PM-IRRAS)]を行った。その結果、膜表在型LSタンパク質SP-Bの模倣ペプチドHel 13-5は肺胞表面の圧縮・拡張の際に、表面-Bulk間を移動することで肺運動の恒常性を保持している。Hel 13-5は溶液中(bulk)において主にα-ヘリツクス構造をとることが明らかとなっているが、気/液界面における二次構造は確認されていない。気/液界面の直接測定が可能なPM-IRRAS手法によりHel 13-5の二次構造は膜の圧縮に伴って形態変化を起こすことが明らかとなった。そこで種々のLS調製物を作製し、これら調製物中におけるHel 13-5の形態・コンフオメーション変化を表面圧の関数として測定した。これらの結果よりアニオン脂質/タンパク質間の静電的相互作用が、呼吸に伴うLS膜分子の移動に関して重要な要因であることが明確となった。偏光変調高感度反射赤外分光法(PM-IRRAS)による測定結果は完全合成型タンパクの気/液界面における構造が明らかになりつつある.この研究における人工肺サーファクタントは、豚インフルエンザ(H1N1),SRAS,炎症性肺疾病、喘息等に引き起こされる呼吸困難ばかりで無く呼吸窮迫症候群や突発性呼吸窮迫症候群の治療に非常に有効と期待される。
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