本実験計画の目的は、生体適合性が高いシリカによる量子ドットに腫瘍特異的な抗体やペプチドを付加することで腫瘍に標的化し、高磁場MRIと生体蛍光イメージングの両方で腫瘍検出が可能なマルチ・プローブを作成することである。その検出は、異なった腫瘍株やステージにおいて検討する。また、超早期腫瘍の検出の可能性についても併せて検討する。本年度は、マウス大腸癌モデル(colon-26)の異なったステージにおける、その発達を可視化した。B72.3抗体を負荷したマルチモーダル量子ドットを製造し、担癌マウスに適用し、in vivoで観察した。イソフルレン麻酔下において、ナノバイオプローブを尾静脈からマウスに投与し、蛍光イメージング装置および7T MRIの両方で、同一個体に対して撮像を行った。蛍光イメージングは、Caliper Life Sciences社のIVIS Luminaを使用し、MRIは神戸製鋼社とBruker社製の7T MRIと送受信ボリュームコイルを使用した。この実験の目的は、このマルチ・プローブが、光とMRIの両方のイメージング手法の組み合わせで大腸癌の早期診断ができるかどうかを明確にすることであり、今回の結果は、その目的を達成した。今後の問題点として、プローブが腫瘍の中心部まで完全には浸透しなかったため、粒径や表面性状の最適化等が必要であると考えられた。データを解析し、論文を執筆し、peer-reviewのある国際的学術雑誌に投稿し受理された。また国内外の学会で発表し、研究者や国民に対して説明責任を果たした。
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