近年、メンタルストレスが関連すると思われる疾患が増加しつつある。今回の研究では、同一個体でメンタルストレスが心臓に与える影響を評価する方法を確立するために、ラットにおけるストレスモデルを作成し、心機能の変化を超音波法を用いて評価した。方法は成人雄ラットを用い、不動負荷(約30分:倫理委員会で認められた範囲内)にて精神的ストレスを与え、超音波装置SONOS5500、S12高周波プローべ(を用いて、負荷前後の心機能を検討した。心機能評価に関してはSONOS5500に内蔵されているFractional Area Change法(FAC法)を用いて評価した。同時に血圧や心拍数なども検討した。具体的には30分の不動負荷の直後に超音波法で心機能(FAC)を評価し、ストレスの影響を除去するために直ちに麻酔で意識をなくし、その後10分おきに同様の評価を行った。その結果、負荷中に心拍数は増加し、心臓は過収縮を示したが、麻酔にて意識レベルを低下させたところ、麻酔後20分をピークに心機能(FAC)は一過性に著しく低下し、その後徐々に回復した。麻酔の影響を評価するために翌日に30分の不動負荷を行わずに、麻酔の影響を検討したところ、不動負荷直後のような急激な一過性の心機能(FAC)低下は認めなかった。これにより、30分の不動負荷が心機能を一過性に低下することが確認でき、しかも超音波法でその経過を詳細に評価することが可能であった。現在、種々のβ遮断剤や降圧剤などの薬剤の効果を検討中であり、その結果の一部を09年6月の欧州高血圧学会で発表した。
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