研究概要 |
近年、メンタルストレスが関連すると思われる疾患が増加しつつある。今回の研究では、同一個体でメンタルストレスが心臓に与える影響を超音波法にて評価する方法を確立するために、ラットにおけるストレスモデルを作成し、心機能の変化を観察した。方法は、雄ラットを用い、30分の不動負荷にて精神的ストレスを与え、高周波プローベを用いて、負荷前後の心機能を検討した。心機能評価に関しては不動負荷の直後にFractional Area Change法(FAC法)を用いて評価し、ストレスの影響を除去するために直ちに麻酔で意識をなくし、その後10分おきに同様の評価を行った。同時に血圧や心拍数なども検討した,その結果、負荷中に心拍数は増加し、心臓は過収縮を示したが、麻酔にて意識レベルを低下させたところ、麻酔後20分をピークに心機能(FAC)は一過性に著しく低下し、その後徐々に回復した。麻酔の影響を評価するために翌日に30分の不動負荷を行わずに、麻酔の影響を検討したところ、不動負荷直後のような一過性の心機能(FAC)低下は認めなかった。これにより、30分の不動負荷が心機能を一過性に低下することが確認でき、しかも超音波法でその経過を詳細に評価することが可能であった。この基礎データをもとに各種降圧剤を不動負荷前に投与して、心機能低下の予防効果を検討した。α遮断剤またはβ遮断剤のみでは十分な予防効果を認めなかったが、α・β遮断剤では予防効果があり、しかもαとβの比率によりその予防効果に差異が認められた。 さらにカルシウム拮抗剤(アゼルニジピン)でも同様の効果が認められた。また、雄では不動負荷にて著しい心機能の低下を認めたが、雌においては著明な低下を認めなかった。さらに卵巣摘出ラットでは雄と同様に不動負荷にて著しい心機能の低下を認めたことから女性ホルモン(エストロゲン)などが関与しているのではないかと推察した。これらの成果は各種学会で発表し、投稿準備中である。
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