研究概要 |
本研究は,マイクロ波帯の電磁波を利用したCT(コンピュータ断層撮影装置)の早期実現に寄与するため,再構成(比誘電率分布推定)アルゴリズムの高速化,精緻化,および適用範囲の拡大を目的としている.平成22年度には,主に以下のような成果を得た. 1.再構成アルゴリズムへの正則化法の組み込み 多周波散乱データを用いるCSI (Contrast Source Inversion)法に対し,TV (Total Variation)正則化法を組み込むこと(定式化)に成功した.ただし,正則化項の関数設定等,効果的な適用方法については未解明の部分が多い.この点については更に解析を重ね,成果がまとまり次第,学会等において発表する予定である. 2.再構成アルゴリズムの改良と適用範囲の拡大 多周波散乱データの重み付けについて重点的に検討し,比誘電率が7程度までの物体であれば,安定的に再構成可能であることを確認した。しかし,目標としていた比誘電率が最高で10~20程度の物体の再構成については,残念ながら達成できなかった.今後も鋭意改良を続ける所存であるが,それと並行して,コンクリート構造物の非破壊検査等への応用も検討していく予定である.マイクロ波帯におけるコンクリートの比誘電率は7~9程度であり,本研究で開発したアルゴリズムにより再構成可能な範囲であると考えている. 3.電磁シールドに関する数値解析 再構成結果の精緻化には散乱データ取得時のノイズ対策が不可欠であることから,電磁シールドに関する数値解析を行い,実験結果と比較した.この成果については,日本生体医工学会研究会において発表した.また,平成23年5月に韓国で開催される国際会議(APEMC2011)においても成果を発表する(論文採録決定済).
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