生物・医学応用分野における超音波技術の利用は多岐に渡り、特に超音波エコー診断技術・機器の開発進歩により医学へ果たしている役割は大きい。「マルチプローブ型顕微超音波照射システムの開発」は超音波医学における新しい治療・診断技法の開発を目指した研究の一環であり、これまで開発をおこなってきたスポット照射型の超音波照射システムをベースに、多機能の観測が可能になるような検出システムを組み込むことによる、新たな医療応用技術の開発に重点を置いたものである。従来の超音波治療用装置には類を見ない、マルチプローブタイプであり、これを用いることにより、超音波による新しい生体機能の検出・診断システムを兼ね備えた診断・治療法開発装置である。さらに、装置をそのままスケールアップすることで、将来的には、小動物や人体への応用の可能性も大きい。従来のシステムでは、顕微鏡下の観察視野内で超音波のスポット照射を目指してきたが、これをさらに拡張して系全体を顕微鏡ステージから解放し、オープンステージ上で、集束超音波照射と試料の温熱観測・各種光学観測を実施し、細胞内・組織内の超音波の効果を照射と同時にリアルタイムで観察することを試みた。また、この目的のために、新しい超音波反応性のプローブの開発も試み、超音波によって各種の化合物の生体中での励起や、活性酸素の放出、キレート金属の放出に成功した。これらの機能を利用することで、ドラッグデリバリーとしての抗腫瘍システムの開発、超音波照射後の生体機能の変化の観察、さらには生体内物質定量用観測システムの開発など、超音波と機能性試薬との組み合わせの応用を広げることに成功した。
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