研究課題
本研究計画中当該年度では、現在臨床で汎用されている化学療法剤と超音波感受性物質を用いた低強度の超音波力学療法(SDT)の併用効果を検討するために、樹立癌細胞を用いて種々の条件下における単独あるいは併用効果を、in vitro実験にて、細胞傷害能を指標として評価することが目的であった。これまで研究計画に従って5種類の樹立癌細胞について、抗癌剤5-FUとCDDPのEC_<50>をそれぞれ決定した。この結果より、ヒトにおける抗癌剤のstable disease、partial/complete responseのin vitroにおけるモデル構築ができたと考えられる。また、超音波感受性物質については、新たにDEGと命名したポルフィリン誘導体のSDTにおける単独での細胞傷害効果を検討した。まず、SDTにおけるDEGの有用性検討に先立ち、その性状解析を行った結果、DEGはこれまでに我々が報告したDEPCやATX-70、あるいは現在光感受性物質として臨床で用いられるphotofrinなどに比べ水溶液中での安定性が高く、極めて取り扱いが容易であることがわかった。このことは、将来的な臨床応用を考えたとき薬剤として非常に有利であり、有用な情報である。つぎに、ヒト胃癌細胞株MKN-74を用いてDEGのSDTにおける効果を検討したところ、超音波単独照射群に比べて優位な細胞傷害効果を示した。このときの作用機序については、以前報告したDEPCと同様に活性酸素種の一つ、一重項酸素が細胞傷害効果の主体と考えられたが、確認のため活性酸素の補足剤を組み合わせて同定を試みた。その結果、驚くべきことにともにポルフィリン誘導体であるにも関わらず、DEGの細胞傷害効果の主体はhydroxyl radicalであった。現在、担癌モデル動物を用いたin vivo実験ならびに抗癌剤との併用効果についてはin vitro実験にて検討を進めており、これまでのところ、いずれも効果が認められている。これらの結果については、現在論文投稿の準備中である。
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