研究概要 |
本研究計画中当該年度では、低侵襲ながん治療を指向した新規ポルフィリン誘導体DEGを用いた低出力超音波力学療法(SDT)と抗癌剤(5-フルオロウラシルとシスプラチン)との併用時におけるin vivoとin vitroでの抗腫瘍効果の増強の有無について、その作用機序を含め評価を試みた。その結果、in vitroにおいてキャビテーション現象(マイクロジェット)による蛍光標識をしたデキストランの細胞内への取込みは、DEGを用いた低出力超音波の照射による傷害を免れた細胞では、ほとんど増えておらず、現在の超音波の照射条件(1W/cm^2,1min,10% duty cycle)ではDDSによる抗癌剤の作用増強は考えにくいことが明らかになった。その一方で、細胞傷害効果は、抗癌剤とDEGを用いたSDTを併用することでその増強が認められたことから、これらの併用による有用性が明らかになった。これらの増強効果は、ヒト胃癌細胞株MKN-74以外にヒト膵がん細胞株QGP-1でも認められたことから、DEGを用いたSDTで明らかになったように、抗癌剤との併用においてもやはり癌腫を選ぶことなくその効果増強が期待できることが示唆された。また、担癌動物を用いたin vivoにおけるDEGを用いたSDTと抗癌剤の併用では、in vitroの結果を反映し、それぞれ単独での治療時に比べ腫瘍増殖抑制効果の増強作用が認められた。以上の結果から、DEGを用いたSDTと抗癌剤の併用では、細胞内への抗癌剤の取込み増加による効果増強は、現在の低出力超音波の照射条件ではほとんど期待できないものの、in vitroとin vivoのいずれにおいてもそれらの併用による効果の増強が認められ、新しい低侵襲ながん治療法として本併用効果の有用性が明らかとなった。
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