研究概要 |
高齢者の転倒による骨折や記憶障害は我が国の医療の大きな問題であるが、その理由の一つとして睡眠薬の使用が指摘されている。本研究の目的は、近年高頻度に使用される睡眠導入剤の服薬後の運動機能や認知機能、気分からみた残余効果を調べ、高齢者に安全な睡眠導入剤を検討することである。 平成20年度は高齢健常者14名を対象に、ゾルピデム(マイスリー、アステラス社)5mg, 塩酸リルマザホン(リスミー、塩野義社)1mg、トリアゾラム(ハルシオン、ファイザー)0.125mg、メラトニン(melatonin, N-acety1-5-methoxytryptamine、米国ナトロール社)1mgの一回服用における翌日の運動機能と認知機能について、プラセボとの比較試験を行った。実験パラメーターは以下のとおりである。客観的評価 : (1)単純弁別反応課題(目と手の反応)、(2)フリッカー検査(CFF)(注意力)、(3)ファンクショナルリーチテスト(動的立位バランス)、(4)重心動揺テスト(静的立位バランス)、(5)アップアンドゴーテスト(Up & Go Test)(起立歩行・方向転換)、(7)記憶課題(のるぷろライトシステムズ作業検査下位検査)主観的評価 : (8)睡眠に関する質問票、(9)Stanford Sleepiness Scale (SSS)、(10)目覚め感(alertness)、居心地(well-being)、疲労感(fatigue)のVisual analogue scale(VAS, 100mm)。 実験場所は、1週間毎5晩にかけて大学の近くの宿泊施設を利用した。服薬後の観察と実験の安全管理を徹底したため、重篤な副作用を訴えた被験者はいなかった。 今後、各睡眠薬とプラセボとの比較試験によって、(1) 半減期においては、短時間型と超短時問型、(2) ω1選択性の有るなし、(3) ベンゾジアゼピン系の睡眠薬であるか否かの3項目に注目し、データ解析を行い、高齢者に好適な薬剤選択の指針を検討する。
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