研究概要 |
【目的】これまでの研究により、拘縮時の軟部組織のうち、最も変化の著しい組織は脂肪織である可能性を指摘してきた。そこで今回ラット膝関節を2週間固定し、筋間脂肪織の変化を検討した(ラットはヒトと違い皮下脂肪織が乏しく、予備実験の上で安定的に脂肪織が存在する大内転筋と大腿二頭筋間の筋間脂肪織を観察部位とした)。 【方法】9週齢Wister系雄ラット36匹(体重240-280g)を使用。うち実験群を21匹、対照群を15匹とした。実験群の左後肢をギプス固定し、対照群ともども2週間飼育後、ラットを安楽死させ、上記筋間脂肪織の変化を光学顕微鏡下で観察した。 【結果】実験群の全例で程度は様々だが、脂肪細胞の大小不同、萎縮と線維芽細胞および細線維~無構造物への置換が観察された。この変化はこれまで膝蓋下脂肪体などで報告してきた変化よりも、より早くまた顕著なものだった。 【考察】2週間の固定で筋間脂肪織の脂肪細胞の萎縮と線維増生を観察したことで、この変化による柔軟性の低下、筋運動に対する適応性の低下の可能性が指摘でき、この脂肪織の変化が軟部組織性拘縮の一端を担う可能性が示唆された。 【本実験の意義と重要性】関節拘縮時の関節構成体外の軟部組織の変化については、前回報告(ラット膝関節拘縮2週間後における坐骨神経周囲の病理組織学的変化理学療法科学24(2):287-291,2009)がこれまで唯一のものであり、今回新たに筋間脂肪織についての知見を得ることで、これまでまったく不明であった軟部組織性拘縮の病態をさらに一つ明らかにできたと考える。本研究は、これまで前例がなく、まったくの新規知見としてその意義は高いと考える。
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