本年度は、慢性呼吸器疾患患者の運動療法プログラムが免疫調節機能に与える影響を検証する目的で以下のとおり実施した。呼吸不全の増悪により入院した慢性呼吸器疾患患者を対象に、運動療法を中心としたリハビリテーションプログラム前後における唾液採取を行った。唾液採取は、サリベット専用綿による咀嚼刺激法によって実施した。運動療法は、「呼吸リハビリテーションマニュアル-運動療法-」に沿った内容とした。得られた唾液検体は、唾液分泌速度を測定し、酵素標識免疫測定法を用いて唾液中分泌型免疫グロブリンA(SIgA : salivary secretory immunoglobulin A)濃度を解析した。さらに、免疫調整機能の関連指標としてBAP (Biological Antioxident Potential)テストを用いて、抗酸化力を解析した。なお、唾液検体の取り扱いは、唾液採取後に遠心し、唾液容量を計測後に分注し、抗酸化能はその日にすみやかに解析した。また、SIgAの解析は-30℃にて凍結保存して、後日解析した。その結果、唾液分泌速度および唾液中SIgAは、リハビリテーション前後においてそれぞれ有意差を認めなかった。また、抗酸化力においても、リハビリテーションの実施により有意な低下を認めなかった。 以上により慢性呼吸器疾患患者の運動療法を中心とした入院期リハビリテーションは、運動能力の向上のための至適運動強度であることのみならず、一貫して局所免疫機能を一過性に低下させることのないプログラムであることが明らかとなった。また、リハビリテーションプログラムは、免疫調整機能として絶対的あるいは相対的欠乏による抗酸化状態に影響しない可能性が示唆された。
|