研究概要 |
本研究では、ADHD児の発話行動を詳しく観察し、吃音児の非流暢性発話が生じるメカニズムおよび、そのタイプを検討することが目的である。このため、昨年度はN病院でADHDと診断された4歳から8歳の54名の対象児に関して1,対象児の特徴、2初診時主訴、3診断時年齢、4初診時年齢からADHDの診断時年齢までの経過月、5言語発達の経過(初語出現の年齢、1~3歳までの言語発達経過)、6吃音の発現の有無、7WISCの言語性知能等について検討した結果、言語発達はやや遅れる傾向がみられたが、言語能力上の際立った傾向はみられず、吃音症状を呈した者はみられなかった。このことから、既に、吃音と診断された9歳のADHD児の母子場面における吃音症状について、発育上問題がなく知的発達についても問題がない、いわゆる発達性吃音児(同じく9歳)の母子場面における吃音症状の対比を行った。その結果、ADHDである吃音児では、吃音生起時の緊張が高いこと、吃音症状の生起が1発語文内で多くみられる傾向が認められた。吃音の進展プロセスについて、ADHD児では重篤化傾向が強いとも考えられるが、より多数の吃音を持つADHD児の吃音の進展、症状の精密な検討が必要と考えられた。 また、ADHD児の神経学的観察においては、眼球運動、運動の巧緻性に問題があるものが多発した。今後は神経学的な評価と発語活動の評価をより詳細に行うことが有用であることが示唆される。
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