運動療法が動脈硬化や脳卒中の進展抑制にどこまで関与できるかを研究する目的で、血管内皮機能や血小板活性化、単球活性化と動脈硬化や血栓症との関係を解析した。健康成人よりも脳硬塞患者のほうが血小板は活性化していること、脳卒中や動脈硬化でのインスリン抵抗性が増大すること、また温熱負荷により血管内皮機能が障害され、血小板が活性化され、血管内皮からの線溶活性が低下することを既に報告した。これら私達の先行研究をふまえて、運動療法が血管内皮機能、血小板活性化、単球活性化に及ぼす影響について研究を進めた。その結果、脳卒中後の血管内皮機能や線溶機能は強く障害されていて、運動療法により徐々に軽減してくることが判明した。一方、動脈硬化を基盤としていない脳梗塞では、内皮機能の障害は軽度で脳病巣の発現は遅延した。インスリン抵抗性やメタボリックシンドロームを有する症例では内皮機能の障害や単球機能の変化がみられる傾向が判明した。即ち脳卒中では動脈硬化により血小板が活性化し、血管内皮機能や線溶機能が高度に傷害されているが、運動療法により動脈硬化進展を抑制し脳卒中の二次予防に寄与できる可能性が示唆された。運動療法が片麻痺などの運動機能だけではなく呼吸機能や免疫機能も改善することは既に報告したが、本研究により運動療法が運動・呼吸・循環・免疫・内分泌機能改善にも関与しているだけでなく、動脈硬化の予防や脳卒中の予防にも関与することが示唆された。引き続き研究を進め、運動療法が動脈硬化の進展抑制に及ぼす影響を解析していきたい。
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