研究概要 |
前年度までの研究で線溶機能、血小板活性化、血管内皮障害が脳梗塞片麻痺の機能予後を予測する因子であること、温熱物理療法がこれらの因子を沈静化する効果をもつことを示した。今年度は、運動療法が動脈硬化の進展抑制に寄与できるかを解明する目的で、血管内皮障害や血小板活性化、サイトカインと動脈硬化や血栓症との関係を分析した。脳梗塞亜急性期に運動療法を継続し、凝固機能(PT, APTT, ATIII, TAT, DD)、線溶機能(PIC, α2PI, PAI-1,プラスミノーゲン)、血小板機能(βTG, PF4)、血管内皮障害(vWF, エンドセリン,トロンボモジュリン)、炎症性サイトカイン(IL-1, IL-2, IL-6, TNFα)の変動を測定した。また運動療法の効果を機能的自立度評価FIMにより判定した。運動療法の1日当たりの施行時間とATIII, α2PI,プラスミノーゲンの変動量には相関関係が認められたが、運動療法施行時間とPT, APTT, TAT,トロンボモジュリンとには相関関係はみられなかった。運動療法によりvWF,エンドセリン,βTG, PF4, DD, PAI-1は低下する傾向がみられた。脳梗塞では動脈硬化により血小板が活性化し、血管内皮機能や線溶機能が障害されているが、運動療法により血管内皮障害は軽減し、血小板活性化は低下し、線溶機能は亢進することが示された。本研究により運動療法の継続が脳梗寒における動脈硬化の進展を抑制し、血栓形成素因を抑制し、脳梗塞の二次予防に寄与することが示唆された。
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