研究概要 |
安静臥床などの身体不活動に伴う速筋化と筋萎縮を効果的に軽減するリハ条件の検索のために、昨年度に引き続き、本年度は、若年、壮年、老年期ラットを用いて、身体不活動による速筋の萎縮とそれに対する抵抗運動の軽減効果、ならびに関連タンパク質の発現変化について検討した。 若年、壮年、老年期に相当する4,10,20か月齢のF344系雌ラットを用い、(1)対照群、(2)非荷重群、(3)非荷重+低強度運動負荷群の3群に分けた。非荷重は後肢懸垂法によった。また、運動負荷は1日1回、30分間、週6日の抵抗運動とした。被検筋は速筋の足底筋とした。 非荷重による最大筋力の低下率は加齢に伴い増加した。いずれの加齢段階においても抵抗運動の軽減効果はほぼ同程度(50-60%)であった。ミオシン重鎖分子種組成とミトコンドリア内酸化系酵素活性に関して、非荷重に伴うtype I比率や酵素活性の低下の程度は加齢に伴い減少した。抵抗運動はミオシン重鎖分子種組成の変化に対して軽減効果を示したが、酵素活性の低下に対する効果は認められなかった。 非荷重により熱ショックタンパク質25の発現量はいずれの加齢段階においても低下し、抵抗運動はこれを抑制した。非荷重によるPGC1αタンパク質発現量の低下は若年、壮年期でみられ、抵抗運動はこれを軽減する傾向を示したが、老年期では何ら変化がみられなかった。SirT1とmyostatinタンパク質発現の発現量、AktならびにS6のリン酸化の程度に群間差はみられなかった。 以上の結果から、速筋では非荷重に伴う筋萎縮が加齢に伴い増加するが、速筋化しにくくなることが明らかとなった。これに対して、1日30分間の低強度抵抗運動は完全ではないが、軽減効果を示すことから安静臥床期の積極的なリハの重要性が示唆された。また、老年期では速筋化よりも筋萎縮の対策を重要視する必要性が考えられた。
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