運動は、ラット脳外傷後にトレッドミルにより強制運動を負荷した群と運動を行っていない非運動群を経時的に屠殺した。免疫組織学的な検討に加えて、損傷周囲組織からの神経幹細胞の単離を試みた。脳損傷後、非運動群において損傷周囲で1日、3日及び7日後でnestin(神経幹細胞のマーカー)及びKi67(分裂細胞のマーカー)陽性細胞が認められた。特に運動群では多数の大型のnestin陽性細胞と多数のKi67陽性細胞が見られ、nestin陽性細胞はKi67陽性を示した。さらに非運動群に比較し運動群は損傷後3日及び7日でnestin及びKi67陽性細胞数の有意な増加を示した。Exvivoの実験において非運動群では損傷後3日の損傷周囲組織からのみsphereの単離ができたが運動群では損傷後3日及び7日でsphereの単離ができた。単離されたsphere数は非運動群に比較し運動群で有意な増加が見られた。Sphereは神経細胞、アストロサイト及びオリゴデンドログリアへの分化を示す、neurosphereと考えられた。運動は損傷周囲では神経細胞やグリア細胞へ分化可能な神経幹細胞に対し、損傷後引き起こされる細胞障害や細胞死に保護的に働いていることが示された。脳外傷後に運動(リハビリテーション)をすることは脳損傷後における神経再生治療に有効である可能性が示された。
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