今年度は、脳梗塞後のリハビリテーション(運動負荷)の有無による差異を明確にするために、運動負荷前における脳梗塞の影響の明確化を試みた。ラットの中大脳動脈にマイクロスフェアを注入し脳血管閉塞を生じさせた群(脳梗塞群)と、マイクロスフェア注入を行わずsham手術のみをおこなった群(コントロール群)をモデルとした。まず確実に脳梗塞症状が作成できているか、脳標本のTTC染色および行動観察により確認した。TTC染色では、線条体や皮質の一部に小さな梗塞部位が確認でき、また行動では、片麻痺によると見られる回旋歩行が確認された。梗塞後24時間経過後、大脳半球を摘出し、タンパク質抽出を行った。タンパク質抽出液は、SDS-PAGE電気泳動にかけて分離し、血管や神経の成長の指標となるVEGFおよびBDNFの産生量をWestern Blot法により検出した。コントロール群と、梗塞24時間後群の間には、VEGF、BDNF産生量ともに有意な差は見られていない(n=3)。また、VEGFおよびBDNFの遺伝子レベルにおける発現を調べるため、totalRNAを抽出し、リアルタイムRT-PCR法による解析も行っているが、タンパク質と同様、コントロール群と梗塞後24時間後群の間の差は統計的に有意ではない(n=3)。これらについてはさらにn数を増加して検証を進める。運動負荷前の段階で両群間の差の有無を明確化した上で運動負荷を行い、その影響を経時的に調べる予定だが、運動負荷の方法として、トレッドミルを試みたが、梗塞後24時間の急性期では四肢の随意運動が不十分なため、運動を促す電気刺激を受ける回数が格段に多くなり、精神的ストレスの影響が無視できなくなると考え、水泳などの代替案を検討中である。
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