今年度は、脳梗塞後のリハビリテーション(運動負荷)の有無による差異を明確にするために、7日間のトレッドミル運動をさせた群(運動群)および運動を処方しない群(非運動群)それぞれについて脳梗塞後の変化を比較した。脳梗塞モデルラットは、内頚動脈より45mm径のマイクロスフェアを注入し脳血管閉塞を生じさせる方法にて作製した。マイクロスフェア注入により、明らかな半側運動麻痺による回旋歩行が確認された。さらに、マイクロスフェア注入ラットの脳を摘出し、切片を作成してヘマトキシリン・エオシン染色を行い、梗塞部位特有のニューロン欠損やグリア集積が線条体、皮質および海馬にスポット的に確認され、多発性脳梗塞に近い症状が作成できていると判断した。一方、sham手術群では症状は見られなかった。運動期間終了後、運動群と非運動群の脳を摘出しタンパク抽出を行った。タンパク質抽出液は、SDS-PAGE電気泳動にかけて分離し、血管や神経の成長の指標となるVEGFおよびBDNFの産生量をWestern Blot法により検出した。運動群と非運動群の間には、VEGF、BDNF産生量ともに有意な差は見られなかった(n=3)。一方、梗塞後の脳機能変化を調べるため、運動期間終了後、モリス水迷路を用いて認知機能を評価した。水迷路のゴールがある領域に滞在した時間を比較すると、運動群は非運動群に比べて有意に長かった。このことから、運動が脳梗塞による認知機能の減弱を回復させることが示唆された。
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