前年度に、脳梗塞後急性期におけるリハビリテーション(運動負荷)が認知機能回復に効果的である可能性を示唆したが、運動負荷前の段階で個体間に症状の差がないか再確認を行った。内頚動脈より45m径のマイクロスフェアを注入し脳梗塞を発症させる点が本研究の特徴の1つであるが、実際に脳組織を染色法で確認するとラクナ梗塞のように小さい梗塞が島状に発生していた。このような病態であるため梗塞巣の大きさや場所により症状がバラつくことを危惧し、マイクロスフェアの注入量を変えて注入後24時間経過時点で行動観察により四肢の麻痺状態をスコア化した。ほぼ注入個数に依存した重症度を示した。注入個数を厳密に制御すれば全身症状は均一化できるものとした。 本年度はこれに続いて、リハビリテーションの運動強度に着目しさらに検討を続けた。運動負荷の強弱の境界点として、乳酸閾値(LT)が一つの指標になると考え、梗塞後の運動負荷が適度か過度かを考察した。マイクロスフェア注入前のラットではLTはトレッドミル速度25.4m/minにあったが、マイクロスフェア注入2日後ではLTは20.9m/minに低下し、7日後にはLTは25.2m/minに回復していた。健常時には適度な強度であった運動が脳梗塞後急性期には過負荷となる可能性が示唆された。 認知機能回復の機序を考察すべく、BrdU投与により新生ニューロンの染色を行った。運動群と非運動群の脳切片についてBrdU陽性細胞をカウントした結果、個数に有意差は見られなかった。
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