研究概要 |
ヒトは咀嚼を行いつつ咽頭へ次々と食物を送り込み(stage II transport;以下STII),咽頭に貯留させた後,嚥下している.摂食嚥下機構や摂食嚥下障害の病態,特に喉頭に通じる咽頭へ,次々に食物を送り込む運動であり,嚥下障害をもつ患者では,誤嚥のリスクを高める可能性のあるSTIIに関しては,未だ不明な点が多い.その機構の解明や疾患による違いを明らかにすることで,誤嚥のリスクなどを軽減できる可能性がある.またRebecca J.Leonardらは,健常成人を対象にして,嚥下造影検査(Videofluorography;以下VF)を用い,咽頭に貯留した食物の断面積を測定して,咽頭収縮力を計測している.しかし,疾患による変化は未だ明らかにされていない.平成20年度は(1)健常人10名を対象にしてVFを行い,その画像を画像解析ソフトIMAGE-Jを用いて,STIIにより咽頭に送り込まれた食物の面積を計測した.一口量とその面積の関係をみることで,結果としてVFという2次元の画像からSTIIにより咽頭に送り込まれた食物の体積を予測できることが分かった.(2)(1)で得られた結果を元に,筋強直性ジストロフィー患者10名を対象にして,安静時咽頭腔の計測を行ない,健常人と比較した.筋強直性ジストロフィー患者では,咽頭腔が健常人に比して広くなる傾向が認められた.筋強直性ジストロフィー患者では,咽頭を構成する筋の筋力低下や弛緩が原因ではないかと考察した.
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