研究概要 |
脊髄損傷者の歩行再建に、リハビリテーションロボット(以下リハロボット)の利用が注目されている。本研究の目的は、リハロボットを用いた歩行訓練の訓練様式が脳の活性化に与える影響について、多チャンネル近赤外線計測装置を用いて、健常者と脊髄損傷者について比較検討することにある。本年度は、健康成人は、昨年度の5名に追加して3名を、脊髄損傷者は、慢性期の完全対麻痺者2名、慢性期の不全四肢麻痺者2名を対象とした。被験者は60秒の安静の後、60秒間のロボット補助歩行を行うセッションを2回繰り返し、脳賦活の状態をモニタリングした。歩行様式は、(1)能動補助モード;ロボットアームに合わせて能動的に下肢を動かす,(2)受動モード;ロボットアームに下肢を完全に任せる,(3)イメージ喚起のみ:下肢の運びのイメージを思い浮かべるがロボットは動かさない,(4)受動運動+イメージ喚起;下肢はロボットの動きに任せるが、下肢の運びのイメージを思い浮かべのとした。(5)鏡を使用した視覚フィードバックである。健常者では、受動モードより能動補助モードにおいて、より賦活化が見られた。イメージ喚起のみでみられる弱い運動野の賦活化は、ロボットでの受動的な動きで若干増強される傾向にあった。また、視覚によるフィードバックでは、より広い範囲の脳の賦活が見られた。脊髄損傷者では、完全麻痺と不全麻痺で結果が大きく異なった。完全麻痺では、能動補助モードやイメージの喚起では、賦活があまり見られなかったが、視覚にフィードバックにより大きく不活化された。一方、不全麻痺では、受動モードを除き、いずれの歩行様式でも賦活がみられ、健常者に比較して広い範囲が賦活されていた。健常者と脊髄損傷者では、リハロボット歩行訓練中の脳賦活の様式が異なり、脊髄損傷では損傷の程度によっても異なることが明らかとなった。
|