研究概要 |
医療・福祉分野に従事する看護、介護職員の職業性腰痛は、60〜70%が職務上で再発を繰り返している。本研究の目的は介助動作の中で介助負担の大きな座位からの立ち上がりの介助を模擬的に計測し、腰部圧迫力の推定とリスク要因を抽出することである。 対象:保健学科の学生10名、平均身長158.3±5.3cm、平均体重50.3±4.7Kgであった。方法:ベッド上に腰掛けた模擬患者の立ち上がりを異なる2種類の介助方法とベッド高(45cm,55cm)の2条件で行い、介助者の腰部に生じる圧迫力と主観的負担度を評価した。対象者の体幹(左右腹直筋と脊柱起立筋)に表面筋電計と傾斜センサを取り付け記録した。介助方法は両膝を伸ばしまま体幹を伸展させながら模擬患者を引き起こす方法(引き起こし法)と両膝を十分に曲げ、膝を伸展しながら模擬患者を引き寄せる方法(重心移動法)をランダムに実施した。 結果:介助中の動作筋電図は有意な差を示さなかったが、介助開始より40〜60%timeで筋活動のピークを示した。腰部椎間板(L5/S1)内の推定圧迫力は、45cmのベッド高、引き起こし法が最も(8600から13000N)が高値を示し、最も低値であったのは、ベッド高55cm、重心移動法(4800〜8400N)であった。また介助中の主観的評価では、ベッド高に差異は認めなかったが、重心移動法は引き起こし法に比べて有意に負担が小さかった(P<0.05)。 総括:統計的にはベッド高と介助法において交互作用はなかった。すなわち2種のベッド高に関係なく、重心移動法の腰部圧迫力が有意に小さかった。一方2種の介助方法に関係なく、ベッド高が高い(55cm)は有意に腰部圧迫力が小さかった。
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