研究概要 |
序論: 医療、福祉分野に従事する職員の腰痛発生率を抑制するための、様々な方法が試みられている。中でも重度な障害を有した方の移乗補助器具の利用は、腰痛予防や介助負担軽減に有効であると言われている。しかしながら補助器具を用い身体的な負担を工学的な計測で、明らかにした報告はない。本研究の目的は、ベッド上で仰臥位となった模擬患者を頭部方向へ20cm引き上げる介助を行った時に、スライディングシートの有無と介助者の立つ置による介助者の腰部負担度の差異を客観的な指標で明らかにすること。 対象: 腰痛の既往のない若年健常女性11名、平均身長159±3.7cm、平均体重53.4±5.7Kgであった。模擬患者は身長147cm、体重35kg、独力で起き上がりが出来ない重度な患者を想定した。 方法: 超音波式3次元動作解析装置(Zebris,CMS-10)の超音波センサを被験者の体幹の背面に装着し体幹、腰部、骨盤の3軸方向の動きを計測し、腰部椎間板内の圧迫力を算出した。 結果: 腰部椎間板内圧迫力は、シート無しで3400N、シート有りは2750Nで有意にシートを用いた方が圧迫力は軽減できた。また介助者の立つ位置は、模擬患者の胸部側と骨盤側で比較したが、有意な差はなかった。シートの有無と立つ位置の間に交互作用はなく、シート使用が腰部圧迫力を軽減できることが明示できた。
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