研究課題
水素吸蔵合金(MH)アクチュエータは小型で大きな出力が得られ、無騒音・無振動で、動作に柔らかなクッション性を兼ね備えるという特徴をもつ動力源で、福祉機器に適しており、移乗介助機器、車椅子の起立動作支援機器、身体装着型の関節リハビリ機器等への応用が図られている。MHアクチュエータが他の動力源と決定的に異なる特徴は熱で動作する点であり、周囲に適当な熱源があれば、その供給で水素放出させ、自然冷却で水素吸収をさせると、電力供給が不要の動力源となり得る。本研究の目的は作業環境にある廃熱を利用して積極的なエネルギー供給なしで駆動するMHアクチュエータを利用したエネルギーレスアクチュエータの開発である。MHの特性として熱供給による水素放出は極めて急峻であるが、熱量供給遮断後の水素再吸収に多大な時間を要するという問題があり、これが廃熱駆動を困難としていた。MHの合金組成の改良等によりこの問題を克服することで、電力供給を必要としない特殊な動力源が実現する。昨年度の研究成果として、水素吸収特性に優れたLaNi5系にAl、Co等の元素を添加した2種類のMH組成LaNi4.3Co0。5Mn0.2(MH_2)とLaNi4.1Co0.5Al0.2Mn0.2(MH_3)で、室温環境における自然冷却での水素吸収特性が大幅に改善した。今年度は太陽光への暴露による放射熱を熱源として駆動させるための実験装置を構築し、上記2種類のMH組成の挙動を実測した。その結果、太陽光のような低品質熱源においてはMH_2で水素放出特性が良好であることを確認した。ただし、温水廃熱を駆動熱源とした場合に比べて、水素放出・吸収の時間が延長し、制御性も不十分なことが明らかとなり、MHアクチュエータを空気圧縮機に転用し、空気コンプレッサーとしての利用法を構築することで、制御性を実用に資すレベルにまで改善できることを確認した。
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IFMBE Proceedings Neuroengineering, Neural Systems, Rehabilitation and Prosthetics Vol.25/9
ページ: 287-290