本年度は、市販されている介護食調製用の凝固剤や増粘剤を用いて調製したゲル体、病院で調理したペースト食やゼリー食のような嚥下食、ならびに流動食の粘弾性測定に主眼を置き基礎研究を行った。 嚥下食については、冷蔵して凝固(4℃)させる、あるいは常温(20℃)で調製すること、さらに摂食時(体温程度:40℃)での軟化・流動状況の把握を考慮し、これらに温度変化(4℃〜20℃〜40℃)を与えた際の粘度は振動式粘度計を用いて(凝固体はゲル強度も)調査した。また流動食については、医学部付属病院で用いている経腸栄養剤を単独、あるいは凝固・増粘剤を添加して測定した。 この結果、特に増粘剤を添加した場合は濃度と共に粘度が指数関数的に著しく増加し、測定値のバラツキも増すことが判明した。しかし、厚生労働省の食品物性評価指標に示されているB型(回転式)粘度計を用いた測定結果と比較したところ、振動式粘度計の測定結果は1/20〜1/60となることが判明した。これは、増粘剤に含まれる成分により、ゲルが非ニュートン性のpseudo plastic viscosityを示すことが原因と考えている。 一方では、実際に医学部付属病院にて患者へ提供している嚥下食の粘弾性評価を行った。この結果、凝固剤で固めたゼリー食の粘弾性に関する知見は蓄積できたが、ペースト食の場合では増粘剤を添加しなくても非常に高い粘度を示す等、食材により粘度が大きく変化することが判明した。 これらの成果は2009年春季第56回応用物理学関係連合講演会にて発表した。 なお、本年度交付された補助金にて購入した設備を利用して治療食のテクスチャー測定を行っているが、前述したようにペースト食では食材や増粘剤の種類・濃度により粘度が大きく変化するため、厚生労働省の物性評価指標に準じた測定ができないことを確認した。そこで現在、装置の改造を予定している。また、これら進捗状況から、本年度は被験者による官能評価は実施できなかった。
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