研究概要 |
前年度に引き続き,日本音響学会および,聴覚研究会に出席し,バイノーラル信号処理に関する情報収集を行い,本手法のオリジナリティを確認した.DSPICを用いたハードウェアへの実装について,そのコードを実装し,動作を確認した. 加振デバイスに入力する際の最適な信号を精査するために,石膏で作ったヒト頭部模型の耳に当たる部分に,骨導デバイスを固定し,処理した音声信号を入力した.また,ヒト頭部模型に伝わる振動を,デバイス近傍に取り付けた加速度センサ(NEC三洋,SV1112)で計測し,FFTアナライザ(小野測器,CF-7200)で記録した,その結果,音声の周波数帯域である500~1000Hzの伝送効率が良く,本デバイスが音声補聴用として適していることが明らかとなった. 補聴デバイスの主観的性能評価として,今年度は,特に両耳補聴信号に遅れが生じたときに,音声の了解度がどのように変化するかの評価実験を行った.具体的には,10ms,20ms,50ms,100msと時間遅延を変化させ,直接伝わる音声と補聴デバイスにより処理されて遅れが生じて聴こえるテスト音声を混合し,混合音圧比やSN比を変化させて,了解度を測定した.その結果,補聴信号の遅れ時間が20msから50ms付近において,著しく了解度が変化することが明らかとなったものの,具体的にどの遅れ時間が閾値となるのか,また,その原因については,解明には至らなかった.また,定位性能の評価も行った.定位性能については,システムで発生する補聴信号の時間遅れによって優位な差が生じなかった.システムにより生じる補聴信号の時間遅れと人間の音声了解度や音源定位能力の関係については,今後さらに検討が必要と考えられる.
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