本研究の目的は、体表点字を用いて盲ろう者が円滑なコミュニケーションを行うための方策の解明と実装をすることである。体表点字は体の任意の部位に装着した複数個の振動モータによる振動の有り無しから点字情報を読み取るというシステムである。盲ろう者のコミュニケーションでは、実はコミュニケーションを始める前の段階で困難さ(バリア)が存在する。それは会話をする相手が近くにいるかどうかも分からない点である。本研究ではこのコミュニケーションを始める前の相手を探す段階(話者との接触)を赤外線通信で行うこととした。 平成20年度の研究では、盲ろう者が身につける赤外線通信ができる体表点字装置と健常者が用いる携帯電話を利用した赤外線通信ソフトウェアの開発を行い、文字単位で双方向の通信ができることを確認する予定であった。 健常者側は普段持ち歩いている携帯電話を会話ツールとして使うことを考えていたが、現在使用されている携帯電話の赤外線通信ソフトウェアは対象が限定されており、体表点字装置との赤外線通信は不可能であった。本研究は携帯電話に通信機能を作りこむのが目的ではなく、赤外線通信を用いて話者との接触の実行、その後のコミュニケーションを体表点字にて円滑に行うのが目的であるため、携帯電話の部分は携帯電話と同じ文字入力方式を行う模擬装置を作成した。健常者側の装置の実装までに時間を要してしまい盲ろう者側の装置は基板上で製作にとどまってしまったが携帯電話模擬装置との間で赤外線通信による文字単位での双方向の通信ができることを確認した。 平成21年度の研究の前半にて盲ろう者側の装置をベストのような衣服に実装し話者との接触の実現を確認する。
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