本研究の目的は、体表点字を用いて盲ろう者が円滑なコミュニケーションを行うための方策の解明と実装をすることである。体表点字は体の任意の部位に装着した複数個の振動モータによる振動の有り無しから点字情報を読み取るというシステムである。 平成22年度の研究では、はじめに全国盲ろう者協会を訪れ、盲ろう者の分類・生活実態について調査確認をした。盲ろう者は障害になった順番により盲ベースとろうベースに分類できる。点字の利用は、盲ベースの盲ろう者でもあまり多くなく、ろうベースの盲ろう者ではほとんどない。点字が利用されない理由は、点字のサイズが小さく触読が困難なためである。体表点字は大きな点の振動になるので、初心者でも読めるため有効であることを確信した。 本研究システムである対面でのコミュニケーションシステムを長期にわたって試用していただける盲ろう者(と健常者)を探すのは困難なので、盲ろう者にもすぐにメリットを感じられる携帯電話システムを通じて円滑なコミュニケーションのための方策を検討することにした。携帯電話システムは通常の携帯電話に体表点字を装着することにより、盲ろう者同士または盲ろう者と健常者が体表点字にて会話を行えるシステムである。このシステムを用いて、単に文字情報を体表点字で伝え合うだけでなく、会話の開始と終わり、発言の訂正、相手の発言の再要求などの振動を定義することにより、会話を円滑に行えるようにできた。これらの多くは対面でのコミュニケーションでも利用できる。携帯電話システムは携帯電話の音声チャンネルを利用して交互に会話を行う半2重通信である。対面でのコミュニケーションでは、健常者からは盲ろう者が見え、盲ろう者の体に触れることもできる。今後はこの健常者の視覚と健常者から触れられた盲ろう者の触覚を情報チャンネルとすることにより、より円滑にコミュニケーションを行う方法を考えていきたい。
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