研究概要 |
研究機関が所在する大牟田市は高齢化率が27%を超えており全国でも有数の高齢社会を迎えている.したがって,高齢者の健やかな生活を支援することは地域の大きな課題となっている.ところで,個人の健康を示す指標としては現在体力測定がある.この体力測定においては,筋力や筋持久力を計測し健康の度合いを定量的に評価している.これら筋力や筋持久力の測定においては,従来からバネを利用した計測器が広く用いられてきた.たとえば,握力計や,背筋力計が挙げられる.これらの測定器は基本的にはバネばかりと同じ構造になっており,バネを引っ張ったときの最大変位からバネ定数に応じて筋力を同定している.ところが,このような装置を高齢者の体力測定に適用しようとすると,機器の構造上最大発揮力を発揮しようとすればするほど,極度の筋緊張(怒責動作)が必要になる.このため,被験者である高齢者によっては,健康でありたいがために必要以上に力んでしまい,血圧上昇などの悪影響が生じやすい. そこで本研究では高齢の被験者に負担を与えずに安全にその運動能力を計測できる新しい計測機器を開発している.研究初年度であるH20年度は,市販の小型充電用ダイナモメータに着目して筋パワーの基礎的な計測装置と計測手法の開発を行った.その結果,従来のバネを利用した方式と違って,被験者に怒責動作を強いることなく筋パワーを計測できることが明らかになった.そして,このような小型発電機を利用したパワー計測によって,従来のバネを利用した装置では計測できなかったような筋力の動的な変化,被験者の反射反応時間,さらには得られた筋パワーの最大値からある程度筋力を推定できる見通しが得られた.
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