研究概要 |
研究期間の二年目にあたるH21年度においては,前年度に開発した筋力測定手法で得られる筋力の動的な変化から,とっさのときに高齢者がどの程度の筋力を発揮できるかを明らかにすることを目標としていた.頭書の実験計画においては,被験者に重心を動揺するような実験を行いながら擬似的に転倒に近い状態を作り,そのときの筋パワーの過渡特性を観察することで違いを明確化することを挙げていた.しかし,実際の研究を行おうとした場合に,次の二点から計画を変更することを余技なくされた. 1.被験者の重心動揺を記録するグラビコーダが計画段階よりも値上がりしてしまっていたなどで導入ができなかった. 2.被験者に疑似転倒状態を与えた場合の安全性の確保が行える実験環境の構築ができなかった. 1.については社会情勢の影響があり,2.については,理学療法士との実験の検討段階における議論から被験者が高齢者であるために骨折等の事故に至る可能性が大きいと判断し再検討した. 変更後の計画においては,近年,自動車開発やロボシト開発に適用されるようになってきたモデルベースシミュレーション(MBS)を利用して,被験者が転倒した場合に自身の筋パワーの過渡特性から自重を支えられるかを判断する手法の開発を行った.その結果,本研究で開発した筋力測定手法と今回検討したシミュレーション手法を併用すれば,被験者である高齢者がとっさのときにどの程度の筋力を発揮できるかを予測できる見通しを得ることができた.
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