本研究では、足関節を対象として、他動運動訓練機器の適用が末梢組織の循環状態に与える影響を実験的に解明することを目的としている。具体的には、これまでに開発した足関節底背屈訓練装置を用いて一定期間連続して他動運動訓練を行い、訓練中及び前後の安静時における、アキレス腱付近の組織血流量、局所表面温、局所深部温の変化ならびに装置の反力データ等を連続的に取得するとともに、理学療法の評価軸から患者の身体状況変化を評価し、両者の比較検討を行うことにより、他動運動訓練機器が末梢組織の循環状態に与える影響の評価を行うことを目的としている。上記の目的を実現するため、平成20年度には、訓練動作と末梢循環状態との関連性の評価を行った。若年健常者12名を被験者として被験者実験を行い、他動運動訓練前後のアキレス腱付近の組織血流量、局所表面温、局所深部温の変化について評価を行った。末梢循環機能が低下した状態を模擬するため、大腿部に圧力を加えて駆血を行った状態で他動運動訓練を行い、駆血を行わなかった状態と比較した。実験の結果、組織血流量については、他動運動訓練中はその前後の安静時と比較して、他動運動を実施した側の脚で有意に平均血流量が増加するという評価結果が得られた。一方、対照側の脚については、動作時と安静時との間に、平均血流量の有意な差は認められなかった。局所表面温および局所深部温については、被験者ごとに特徴的な傾向を有しており、他動運動と温度変化との間に関連性を見出すことができなかった。今後も引き続き、上記の個人差を適切にキャンセルする方法を検討していく予定である。以上のように、他動運動訓練動作と末梢循環状態との関連性についての基礎的な評価データを得ることができた。今後はこれらの評価データを踏まえて、他動運動訓練機器の適用が末梢組織の循環状態に与える影響について更に検討を進めていく。
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