本研究では、足関節を対象として、他動運動訓練機器の適用が末梢組織の循環状態に与える影響を実験的に解明することを目的としている。この目的を実現するため、平成21年度には、前年度に引き続いて、訓練動作と末梢循環状態との関連性についての評価を行った。具体的には、中高年の健常者10名および対照群の若年者6名を被験者として被験者実験を実施した。被験者実験では、これまでに開発した足関節底背屈訓練装置を用いて、一方の脚に対して、一定時間連続する他動的な足関節底背屈訓練動作を実施し、訓練中および前後の安静時における下腿の組織血流量、局所表面温、局所深部温等の生体信号を計測して評価を行った。実験の結果、高齢者群においては、他動運動に伴って、動作側の脚における組織血流量の増加および動作側の脚における局所表面温の上昇が認められた。一方、対照群においては、他動運動に伴う局所血流量の有意な変化は認められなかったが、動作側の脚において、他動運動に伴って局所表面温の上昇が生じる傾向がみられた。これらの結果からは、組織血流量および局所表面温の変化が、一定時間持続する他動運動と関連する可能性があることと、関連の強さに加齢が影響する可能性があることを示唆していると考えられる。以上の結果を踏まえて、今後更なるデータの蓄積を図っていくとともに、他動運動訓練機器の適用が末梢組織の循環状態に与える影響について、一層の検討を進めていく。
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