今年度は、各種ストレス時の循環応答及び動脈硬化度が月経周期の影響を受けるか否か、及び影響を受けるとしたらどのような原因が考えられるかについて検討した。正常月経の一般女性を対象として、3月経周期以上にわたって、3日に1回程度の頻度で、Cardio-ankle vascular index(CAVI)の測定及び静的掌握運動負荷テスト、メンタルストレステストとしてカラーワードテスト及び氷水への手の浸水による、いわゆる寒冷昇圧テスと(各2分間)時の血圧及び心拍数の応答の調査を連続的に行った。その結果、カラーワードテスト時の血圧の上昇のみに月経周期に伴う有意な変動が認められた。すなわち、カラーワードテストによる血圧上昇は、月経開始直前及び月経期が月経周期の他の時期に比べて有意に大きかった。この現象は、同時に測定した月経随伴症状の変化とよく対応した。また、血圧上昇の大きかった時期は、月経周期において、通常、女性ホルモンの一つであるエストロゲンの分泌が低い時期であった。エストロゲン分泌の不足はストレスに対する血圧上昇を大きくすることが報告されている。これらのことから、メンタルストレスに対する血圧応答は月経周期の影響を受けること、及びその影響は月経随伴症状の変化やエストロゲンレベルと関係することが推測された。また、本研究の結果を踏まえると、閉経前女性を対象として、比較的に短時間の運動や寒冷ストレスに対する循環応答の調査や脈波伝播機能から動脈硬化度の判定を行う場合に、月経周期の時期についての考慮は必要ないと考えられる。
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