ヒトは意図した動作課題を遂行する際、その動作課題に関連した知覚情報に応じて動作を組織化する。本研究は、「この知覚-運動制御過程における、認知的情報処理活動の関与」について、「標的に対して手を伸ばしそれを捕捉する」動作(Prehension)と「標的物の大きさを判断し、(標的に対して手を伸ばすことなく)同様の捕捉動作によって、認識した大きさを表現する」動作課題(Matching)を用いて取り組むんだ。これの課題は標的サイズに関する同様の視覚情報に対して、)同様の手指関節運動が産出されるものの、Matching課題においては、視覚によって認識された標的サイズについて特定の摘み動作サイズを対応させるという認知的情報処理が介在すると考えられる。これらの課題遂行中の脳波を測定・分析することによって、大脳皮質レベルにおいて、課題遂行条件に応じて課題遂行のための認知的活動がどのように関与するのかを検討した。10名の被験者が画面上に表示された視覚標的に対してPrehensi6nおよびMatching動作をそれぞれ80回行った。課題条件の順序効果については、被験者毎に課題遂行順序を変えることによって相殺した。課題遂行中の脳波について、coherence分析により大脳皮質の各部位間の活動の連結性について検討した。Matching課題遂行では、より広範囲にわたる皮質部位間における連結性が示され、それらの部位間におけるシグナルのやり取りにより課題が遂行されていることが見出された。また、サイズに関する錯視を誘発する標的物に対して動作を行った場合、MatchingとPrehensionでは異なる部位間の連結性がその影響を受けており、同様の刺激に対する同様の課題動作産出であっても、課題遂行における認知的課題要求に応じて皮質レベルでの知覚-運動のためめ処理過程が翼なることが明らかになった。
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