本年度は、神奈川県内の幼稚園において、在園児とこの幼稚園を卒園した小学生を対象として引き続き研究を行った。「スキル」の評価対象動作は立ち幅跳びとし、二次元DLT法により合成重心、下肢の各関節(股関節・膝関節・足関節)における角度・角速度・角加速度等のデータを算出した。これらの変数を基に、幼稚園(年少・年中・年長)から小学校低学年(小学校1年生・2年生・3年生)までの計6年間のデータを統合し、跳躍動作時における「運動伝導」を観点として縦断的に検討した。その結果、幼児においては、年少から年中にかけて成人と同様の「運動伝導」が出現しはじめ、年長から小学生にかけてはそれが維持されることが明らかになった。 また、25m走、ボール投げを実施し、跳躍以外の基本的な動作の獲得過程についても検討を加えた。25m走においては、1年間の期間をおいて2回測定し、所要時間・ピッチ・歩幅について偏相関分析を行った。その結果、幼児の走速度の増加は歩幅の増大だけでなく、ピッチの増大にも起因すること、これが年少から年中にかけてみられることが明らかになった。投動作については、三次元DLT法を用いて、腕の振り、体幹の捻り角度を算出し、運動形態学的観点であるパターンとの関係を年少・年中・年長間で比較・検討した。その結果、幼児の投動作における腕の振り動作と体幹の捻り角度の増加は、学年があがるにつれて獲得・発達していくこと、およびkinematics観点と運動形態学的観点から、年少から年中の時期に発達が著しいことが明らかになった。 本研究の結果から、走・跳・投動作における「スキル」は、主として年少から年中の期間に大きく獲得され、それが年長から小学生に維持されるという結果を得ることができた。これらはスキャモンの発育・発達曲線の神経系のパターンに合致しており、この時期における教育・訓練の重要性が示唆された。
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