学校教育、あるいはスポーツコーチングの場において、指導者が学習者に"動きを教える"(運動指導)活動はもっとも重要な課題であるが、その際、他者に伝えようとする運動を指導者自身がどのような意識で行っているかという「運動感覚意識」は、指導内容および指導方法にきわめて大きな意義を持っている。しかし、人間の動きは脳からの命令に従って発現されるが、その内容がすべて意識されるわけではないことから、意識されている内容だけを指導しても、学習者に不足している運動感覚(キネステーゼ)に適合した運動指導とはならないことが少なくない。無意識的に実行されている動きを支えている受動的キネステーゼの解明が求められることになる。本研究は、現象学的視点からその問題について事例を通して考察するものである。
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