本年度は、不登校児の自然体験療法過程における治療的要因を明らかにする上で、キャンプに参加した生徒の事例研究から治療的要因の検討を行った。事例研究の対象となったクライエントは、学校場面では喧嘩などを繰り返し、攻撃性の表出が問題となる生徒であった。事例を面接記録や風景構成法から検討した結果、以下のことが明らかになった。1)自然体験療法場面では、クライエントの攻撃性の質や表出の量が明らかに異なっていた。その理由として、自然体験療法における自由な雰囲気とキャンプカウンセラーの受容的な関わりが肯定的に影響したことが考えられた。特に、クライエントの攻撃性の表出を必然的なものとして理解し、受け止め関わったことが有効であった。2)自然体験療法における登山などの身体的、精神的な限界に迫るような体験が奏功した。思春期のクライエントにとって、身体を通した世界との関わりは、自己認識や世界認識を変化させる上で有効であると考えられた。また、長期間(18日)における身体活動によってクライエントの攻撃性の器として身体が形成され始めたとが推測された。また、3)自然体験療法で活用されるグループにおける「振り返り(シェアリング)」が治療的要因として機能するためには、グループの枠組みが充分に機能することが必要である。4)風景構成法では、クライエントの自然体験療法による変化が示された。特に、風景構成ではIV型からV型への変化が見られ、構成に奥行きや広がりが示された。このような風景構成法の変化は、自然体験療法における効果として理解され、攻撃性の消失との関連が示唆された。
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