研究概要 |
発達障害は、不登校を引き起こす要因の一つと考えられている。そこでは、自然体験療法プログラム(以下OETP)に参加した軽度の発達障害を抱える青少年について検討した。研究の目的は、OETPに参加した軽度発達障害を抱える青少年の特徴について風景構成法(Landscape Montage Technique)から明らかにすることであった。被験者は、広汎性発達障害、注意欠陥多動性障害等の軽度発達障害の青少年17名(13.7±1歳)であった。風景構成法は、Pre(プログラム前)、Post1(プログラム直後)、Post2(1ヶ月後~6ヶ月後)に実施した。分析は、構成型(高石,1994)と言われる形式分析を用いた。また、特徴的なケースについては事例を詳細に検討した。中学生以降に見られる構成型の特徴としてI型~III型(自己中心的段階)はまれか、あっても非常に少なく、最も多いのはV型(自我の対象把握が可能な段階)で25%~50%を占め、次いでVI型で30%強、VII型は10%弱であると言われている。本研究では、I型~III型に占める割合が、59%でありきわめて低い構成段階を示し、定型発達における構成型の分布とはかなり様相が異なっていた。自我発達の観点から見れば、自分の見たまま、思ったままを描く自己中心的な自我にとどまっている者が多かった。プログラム後には17例中6例(Post2後には8例)において上位への構成型への変化が認められ、III型とIV型が増加したものの、質的に異なるV型以上への変化は1例のみであった。事例研究では、構成型に示されるような形式的変化とは異なる描画内容の質的特徴が示された。広汎性発達障害の2例においては、プログラム後の描画内容が大きく変化し、描かれる風景のアイテムが関連をもつように描かれていた。これらのクライエントでは、プログラム中の社会的行動においても変化が認められたが、風景構成法における描画では、クライエントの内面の世界形成(世界認識や世界との関わり)の進展を示していたと考えられる。
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