本研究の課題は、不登校やひきこもり(神経症、軽度発達障害を含む)等の心理的な課題を抱える青少年を対象に自然体験療法プログラム(Outdoor Experiential Therapy Program;以下OETP)を実施し、自然体験療法の治療的な要因を明らかにすること。また、クライエントの治療を促進する体験プロセスを明らかにすることであった。本年度の目的はOETPを実践し、クライエントへの肯定的な効果との関連から治療促進的な要因について検討することであった。OETPに参加した生徒の中から3事例について分析検討した結果、次の要因が明らかになった。事例1では、OETPにおける規則正しい生活リズムの体験や自立的な体験によって、日常生活における不規則な生活リズムの改善、あるいは母子分離(自立)を促進することに効果が認められた。事例2では、家庭内において安定した母子関係を築くことができていない事例であったが、カウンセラーの受容的な態度によって、両者の良好な関係性の構築と同時に、良好な対人関係を作るための精神的成長が認められた。事例3では、発達障害特性によるこだわりが認められる事例であった。自然体験活動プログラムにおける能動的に屈従せざるを得ないような非日常的な体験によるこだわりへのあきらめによって、物事へのあたらしい認識(見方)の獲得に役立った。それぞれの事例の治療的要因は、個別的であり治療の転機となる体験は様々であった。しかし、これらの事例から治療促進的に機能する要因は、(1)OETPの構造(バウンダリー)の要因、(2)カウンセラーとの関係要因、(3)自然体験活動プログラムの要因であると考えられる。このような治療促進的な要因は、OETPにおいては、単一で機能するというよりは、有機的に関連しながら治療促進的に機能している。また、一方で、生徒の自我機能の育ちが十分でない場合は、(3)のプログラムの要因が治療的に機能しないことも明らかになった。
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