(1)研究の背景 キャンプ等の自然体験活動は、日常では得がたい実際体験を提供する活動であるが、これまで不登校やひきこもり等の児童生徒への援助アプローチの一つとして活用されてきた。しかしながら、このような自然体験を活用した援助アプローチ(以下、自然体験療法)に関する研究は、その効果を検証するものがわずかに散見されるものの、未だに十分とはいえない。さらに、自然体験療法のいかなる要因が治療的な効果をもたらし、いかに治療的プロセスが進展するのかについては、ほとんど検証されていない。これらが明らかになれば、自然体験療法における有効な介入方法やプログラムの検討に役立ち実践現場への貢献がきわめて大きい。 (2)研究の目的 自然体験療法の特徴である実際体験は、単なる身体的な実際体験にとどまらず「クライエントのあり方を変えてゆくような体験」がなされ、クライエントの内面世界にとって重要な意味をもっている。したがって、クライエント個人の内的体験と治療的効果との関連を検討することが必要となる。クライエントは、固有の問題を抱えていることはもちろん、自然体験療法過程にあっては、それぞれが固有の心の体験をしている。したがって、治療的な要因やプロセスを明らかにするためには、クライエントの固有性に着目した個性記述的研究が必要不可欠である。 このようなことから本研究の目的は、不登校やひきこもり等(神経症、軽度発達障害を含む)の悩みを抱える生徒を対象にした自然体験療法を実践し、それぞれの個別性に着目しながら(1)治療的要因を明らかにし、(2)クライエントの体験プロセス(過程)を分析することである。
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