本研究の目的は、大学の地域貢献とカリキュラムの充実の関連をモデル化するために、民間団体と連携した野外教育プログラムの効果要因を検証すると共に、大学生の指導実践と大学カリキュラムの関連を評価することであった。本研究では平成20年度から22年度にわたり、民間団体の主催する12コース、キャンパーのべ301人、大学生スタッフのべ117人を対象とした。キャンパーを対象に自然体験効果尺度と、効果要因を探るためのMeans-End調査を実施した。大学生を対象としてWilderness Education Associationの開発した18ポイントカリキュラムに基づく指導スキル評価シートを指導実践前後で実施した。その結果、キャンプの効果として、人間関係や自然認識に高い効果が実証された。さらに、これらの効果の要因として原生自然体験、冒険活動体験が最も多く挙げられた。一方、これらの指導実践経験が大学生の指導スキルに及ぼす効果として、野外生活技術、野外活動技術のハードスキルが常に高く、意志決定・問題解決、リーダーシップ、コミュニケーション、グループダイナミクス、教授法のソフトスキルに対する効果は、指導経験内容に影響を受けて向上することが明らかとなった。一方、環境倫理、健康・公衆衛生に中程度の効果が認められ、リスクマネジメント、山行計画、自然・文化史は、キャンパーの直接指導に当たるカウンセラー経験では向上しないことが明らかになった。以上の結果から、民間の野外教育プログラムの企画・運営・指導に野外教育を専攻する大学生が参画することにより、より高度な地域サービスが行えることと、大学生に対し継続的かつ漸増的な指導実践を体系化することの必要性が示唆された。
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